「パンツ」で笑えるのは小学生まで!
それでゲラゲラ笑うのはそうであろう。
どんな題材であれ、機知に富んだ表現で書かれた文章にクスっと笑うことができたら、それは大人である。
たとえそれが、パンツを主題に据えたものであっても。
目次
本の紹介
パンツの面目ふんどしの沽券 米原万里
ちくま文庫
作者について
1950年東京生まれ。
日本のロシア語同時通訳、エッセイスト、ノンフィクション作家
日本共産党の幹部であった父の仕事の関係で、学童期からチェコスロバキアへ渡欧し、ロシア語を通して教育を受ける。
その後もロシアや東欧文化を深く知り、ロシア語が堪能なことを活かし、通訳や翻訳の仕事を手掛ける。
あらすじ
チェコスロバキア・プラハ
10歳のころ、家庭科の初めての裁縫実習でパンツを作った。
立体構造で複雑な、小学生の初めてにはそぐわない代物。
なんで?
その2か月後、林間学校の宿舎でパンツを自作する少女に出会う。東欧圏ではパンツを仕立てるのが淑女のたしなみなのだろうか。
そこから、作者のパンツへの疑問が一気に膨らんでいく。
パンツとふんどし、先に生まれたのはどっちだ。
イエス・キリストが履いていたのはパンツか腰巻か?など。
表には出ないはずのパンツを、ここまで前面に押し出したパンツをめぐる冒険。
パンツが好きな人もそうでない人も、恥ずかしがらずに読んでみて欲しい。
感想
最も身近で最も大事な衣類であるパンツ。
その割にぞんざいに扱われている感がないだろうか。
そしてそんな扱いを受けるものでも、ここまで調べ上げると一冊の本になる。そんな感じがとても楽しい。
米原万里さんのエッセイはどれも最高に面白く、それでいて知性に溢れている。
ものごとに疑問を持ち、その背景を知る。
背景からも派生して疑問を持ち、これを繰り返すさまは、著者の脳内大冒険ジェットコースターに乗り込んだようで、全く飽きずに読み進められる。
タイトル的に電車で読みながらクスクスしているのはちょっと気を遣う感じがするので、お勧めしない。
ブックカバー装着または電子書籍で読むことをお勧めする。
だいたい、白昼堂々「パンツ」なんて単語を大人が見せびらかしてはいけないんだ。パンツで笑えるのは小学生まで!と言いたいが、ここまで楽しめたのは著者の文章力と、自分に残った子ども心ゆえかも知れないので、大切にしておこう。
キリストの磔刑を見て、彼が履いているのは腰巻かふんどしかという論争。
幼少期の純粋な疑問は、これに限らず自分自身も持っていたのかも知れない。
ただそんなことは、夕飯の匂いで忘れてしまうのが普通なんだろうと思う。
大人になっても気になることがあったら、とりあえず忘れないように書き留めておくこと。
それを本当に調べて理解して伝えられたら、ユーモアを身に着けることが出来るのかも知れない。
まとめ
パンツパンツパンツ
大事な部分を隠すための、薄いか弱い存在にここまで重厚なストーリーがあった。
パンツを履く人はもちろん、履かない人にもおすすめの一冊。
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