読書会に参加した。きれいに剃り上げられたうなじ、整えられた口髭。甚平の様な涼しげな和装で、威圧的では無いものの、少し迫力のある彼が紹介した本が、ムーミンだった。
「スナフキンが大好きなんです。」そう言ったのが聞こえた。
にわかには信じられないが、確かにそう言った。そして、彼の掲げるその本の表紙には、荒涼としたエメラルドグリーンの大地と薄紅色の不気味な空。そしてムーミンの文字。
本自体の印象、紹介者の印象、そのどちらもが予想を裏切った。
そして思った。
こんな人がおすすめするのだから、きっと素敵な話に違いないと。そしてついでに、読めば少し男らしくなれるかも知れないし。
こんな方におすすめ
冒険をしていない人、スナフキンに憧れている人
本紹介
「ムーミン谷の彗星」
トーベ・ヤンソン 講談社文庫
この本について
子どものころ、朝のこども劇場で観ていた記憶がある。
愉快なカ…妖精と不気味なニョロニョロ。内容は全く覚えていなかったが、なつかしさからか、すごく親しみがある作品だ。ここでは簡単なあらすじを紹介しよう。
ムーミン谷に彗星が落ちてくる。そして地球が滅びる。
ある日、ムーミン一家の前に現れたジャコウネズミが言った。
彗星が何かも分からないが、地球が滅びるのは一大事だ。
不安にかられるムーミンに、ムーミンママは言った。
「ただ怖がるくらいなら、天文台に行って宇宙の広さや彗星の大きさを見に行ってちょうだいな。そうすれば、私たちも安心できるもの。」と。
その言葉をきっかけに、ムーミンと友達のスニフの冒険が始まった。果たして彼らとムーミン谷の運命やいかに。といったお話だ。
物語を通してあんまり事件が起きない。いや、彗星が落ちてくるという地球規模の大事件が起こるものの、なんだかのんびりと「どうしよう」なんて言っている。そのギャップがなんとも愉快だ。
数日後には彗星が落ちてきて、地球が滅ぶかも知れないと言いながら、好きな人へのプレゼントに悩む。
ニョロニョロの行列を見て「彼らはなんで歩いているのか」なんて言っている。
分からないことが多い世界で、分からないことを受け入れる。
これが多様性ということなのか。北欧の方々の自然に対する鷹揚さというのか、受け入れた上でその時間を自然体に生きるというか、そういった独特な世界観が楽しめる。
ハラハラドキドキを求める方には少し退屈?いやむしろ、何にでも一喜一憂しているほうが、状況に流されているだけで、何も能動的に行動出来ていないのではないか。
現代にも言えるかもしれないが、目まぐるしく変わる日々の中でも、自分を持つことの大切さを感じられる。そんなお話。
そして、大人気キャラクター スナフキンの初登場回でもある。
最後に引用
そこで三人は火をおこして小さなパンケーキを作り、焼けたそばから食べていきました。これがパンケーキの正しい食べ方なのですよ。
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